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『働き方の哲学』村山昇 仕事観、やりがいを見つけたい人の為のバイブル

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この記事は、「働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える(村山昇)」から著者の許諾を得て、一部内容を引用・抜粋しながら本著を紹介します。

本著の目的

かの哲学者ニーチェは、「この世に事実はない。あるのは解釈だけだ」と言いました。また、米国の鉄鋼王カーネギーは、「何を幸福と考え、何を不幸と考えるか。その考え方が幸不幸の分かれ目なのである」とも言っています。

生計を立てていくための仕事は、おおかたしんどいものです。

ですが、同じ厳しい内容の仕事をしていても、やる人によって、そのしんどさのレベルや質が違うのはなぜでしょう? また、同じ状況におかれても、ある人は奮起し、ある人はやる気をなくすという差が生じるのはなぜでしょう?

物事をどう解釈するかによって私たちは自分の生きる世界を決めています。ここで言う「解釈」とは、物事の見方・とらえ方であり、その人が持つ観念や概念です。ひっくるめれば「観」ということです。

私たちは長き仕事人生の途上で遭遇するさまざまな出来事や環境を100%コントロールはできません。しかし、それをどうとらえるかはある程度コントロールができます。

健やかな仕事観は、健やかな仕事意欲を生み、健やかな仕事人生をつくっていく。そうした健やかな「観」をつくるのが、この本の目的です。

さぁ、では、働くことに関わる基本概念を見つめなおす旅に出発しましょう!

仕事・キャリアについて

仕事がうまくいっていれば家族や恋人と過ごす時間も楽しくなります。逆に、仕事の状況がかんばしくなかったり、上司から叱られたりすれば食事がおいしくありません。それほどあなたの気持ちに大きく影響を与えているのが仕事です。

そんな人生の最重要の活動である仕事・キャリアとはいったいどんなものなのでしょう。

(例)「仕事」を多面的にとらえる

幅広い意味で使われる「仕事」という概念
日ごろの職場で、「仕事」という言葉は実に幅広い意味で使われています。例えば─

  • この伝票処理の仕事を明日までに片付けておいてほしい
  • そんな仕事じゃ、一人前とは言えないよ
  • これが営業という仕事の醍醐味だ
  • 課長の仕事はストレスがたまって大変だ
  • 彼が生涯にわたって成し遂げた仕事の数々は人びとの心を打つ
  • この仕事ができるのは、日本に5人といないだろう

こうした意味的な広がりを持つ仕事について、ヨコ軸に仕事がなされる時間の長さ、タテ軸に仕事をやる動機の質の違いを置き、平面的に並べてみたのが下の図です。

明日までにやっておいてくれと言われた伝票処理の単発的な仕事は、言ってみれば「業務」であり、業務の中でも「作業」と呼んでいいものです。たいていの場合、伝票処理の作業には特別の動機はないので、図の中では左下に置かれることになります。

主体性・成長について

英語で「個人」は「individual」─この語は「in=否定語+dividual=分割可能な」で、それ以上分けられない単位のことをいいます。
仕事チームにせよ、会社組織にせよ、家族や社会にせよ、根本でそれを成り立たせるのは一個の独立した人。

「強い個」は「強い仕事」をし、「強い組織」をつくる。
個として立ち、強くあるために、どのような意識を養っていけばよいかを考えていきましょう。

(例)「セルフ・リーダーシップ(自導)」という概念を押さえる

自導とは、「内にいるもう一人の自分」が現実の自分を導くこと。ここで言う「もう一人の自分」とは、目的や理想、夢や志を抱いた内面の自分です。現実の自分がどうしようかと迷っているときに、一段高いところから状況を眺め、進むべき方向を示してくれるはたらきをします。

内なる声が迷える現実の自分を導く
自律と自導はどちらも方向性に関するもので、その点では共通するところがあり、相互に影響しあってもいます。

自律はどちらかというと直面している状況に対し、自分の律でどう判断するかという現実的な思考です。他方、自導は目的や理念、最終到達点から逆算して、自分はどこを向いていくべきかという未来思考のものです。

また、自律的であるためには冷静さが求められるのに対し、自導的であるには、抗しがたく湧き起こってくる内なる声、心の叫びが必要であり、その意味では熱さを帯びる性質のものです。

知識・能力について

知識や能力は「レゴ」ブロックに似ています。自分が表現したいものを組み立てるのに必要な部品。部品を多く持つ人のほうが、表現(=仕事成果)の可能性は広がります。

しかし、部品をいくら多く集めてもそれを使いこなす能力やセンス、表現に軸を貫く能力などより高次な能力がなければ、できあがるものは凡庸に留まります。

そんな知識・能力をいろいろな角度からみていきましょう。

(例)「習慣」がなぜ大きな力になりうるのだろう?

習慣は大きな心的負荷なしに生活・人生に大きな影響を及ぼす
習慣は日常の反復的な行動です。それはたとえ小さな行動であっても、長い間積み重なることで、あたかも生まれつき持っていたかのような性向として固まってきます。習慣が「第二の天性」と言われるゆえんです。

そして習慣は、自分自身にさほど大きな心的負担をかけないにもかかわらず、結果的に生活・人生に強い影響を及ぼします。

習慣は下図のように、天性と努力の中間に位置します。
天性は先天的に受けるもので、もはや変えられません。そして天性は、自分が無意識のうちに生活や人生に作用してきます。
他方、努力は後天的に「いま・ここ」から自分で意図的に変えていけるものです。

習慣はこれら両方の性質を持つことが重要な点です。すなわち習慣は、なかば天性のように自分に定着している性向・行動・態度・姿勢ですから、知らず知らずのうちに人生に影響を与えることができます。
また習慣は、努力の一部、技術の一部ですから、意志を持って取り組めば、自分をそう仕向けることが可能です。そこには、まったく新しい第二の天性を後天的につくることができるという希望があります。

ただ、習慣には「よい習慣」と「わるい習慣」があります。習慣の力は薬として効きもすれば、毒としてはたらく場合もあります。習慣のポジティブ作用とネガティブ作用の仕組みを次ページに示しました。

働く意味について

私たちは、ただ食べるために働くよりも、何か意味を満たすように働きたい。

でも、その「働く意味」って何なのでしょう。
それは見つけてつかめるものなのでしょうか。

いや、そういう大きな問いを考える前に、明日までにやらなければならない業務があり、達成すべき数値目標がある。それらに忙殺されながら、1年が過ぎ、3年が過ぎ、10年が過ぎていく......

(例)自分は何の価値を世の中に提供する職業人だろう?

私たちはモノを売るのではなくその核にある価値を売っている 自分は何のために働くのか?」という問いは漠然としすぎていて、考えようにもなかなかうまく考えられないものです。それをもう少し切り口をつけて考えるのがこの「私の提供価値宣言」です。

右ページの「私の提供価値宣言」シートにある空欄にあなたは何という言葉を入れるでしょう。私たちは仕事を通じて、目に見える具体的なモノやサービスを売っていますが、もっと根本を考えると、その核にある「価値」を売っています。

例えば、保険商品を売っているというのは、根本的には「経済的リスクを回避する安心」を売っていると言えます。また、新薬の開発研究であれば、「人類の健康のための発見」あるいは「その病気のない社会」を売っている。財務担当者は経営者に対し、「数値による企業の健康診断書」を売っている。米作りの農家なら、「生命の素(もと)」という価値をお客様に届けています。

いずれにせよ、ここには主観的で意志的な言葉が入ります。この主観 · 意志こそが、キャリアという長き旅路における目的となり、アイデンティティーとなります。

技術は手段であり、変化していくものです。しかし自分の働く目的やアイデンティティーは不変の軸であったほうが望ましい。「私は音楽を楽しむライフスタイルを提供する職業人である」と構えれば、技術の変化を超えていける。

会社の中で働くことについて

現在、国内の就業者のうち、会社をはじめ官公庁や団体に雇われて給料を得ている人の割合は、ゆうに8割を超えます。

働く人の圧倒的多数が「雇われる生き方」を選択しています。

会社(あるいは組織)の中で働くことは自身の職業人生にどんな影響を与えているのでしょうか。また、「雇われない生き方」という視点から何が見えてくるでしょうか。

(例)個と組織の関係性はどうあるべきか?

2つの意識が心の中で複雑に混ざり合う
会社員として働くとき、あなたの献身の向け先は、会社(雇用組織)にあるでしょうか?それとも職業にあるでしょうか?
その向け先によって「会社人」の意識と「職業人」の意識とが生じます。両者は心の中で複雑に混ざり合います(下図)。

多くの会社員は会社人的な意識をベースにします。「会社に雇われ続ける」ことを目的にする気持ちが核になるからです。一方、職業人の意識は、プロスポーツ選手の場合を考えるとわかりやすいでしょう。

例えば、プロサッカー界で活躍するX選手は、いまはたまたま海外の名門Aチームに所属していますが、以前は国内のBチームに所属していました。
彼らは、組織の中で食っているのではなく、自らの運動技術・競技精神を直接社会に売って生きています。彼らの目的は、その競技の道を究めること、トップレベルで勝負事に挑むことであって、会社はそのための舞台、パートナー、手段です。

そういう意識ですから、世話になったチームを出て、他のチームに移っていくことも当然のプロセスとしてとらえます。ただ、それは組織への裏切りではありません。「卒業」であり、「全体プロセスの一部」なのです。

会社と個人の関係をどうとらえるかというのも異なる点です。会社人的意識では「タテ関係」と見る傾向性が強いのに対し、職業人的意識では「ヨコ関係」と見ます。

心の健康について

本来、私たち一人一人が自分の仕事の主人になって働いていくものです。
ところが昨今、仕事のほうが主人(モンスター?)となって、私たちを働かせるようになってきました。
そして中には、心身をひどく弱らせ、病気になる人が増えています。長き職業人生を健やかに歩んでいくためにはどういった心の構え方が必要なのでしょうか。

(例)「持続可能性」という観点からキャリアのあり方をながめる

キャリアという名のマラソンを完走し、楽しむために
一般的な例で言うと、大学の学部卒業者が22歳で会社に就職し、65歳まで働いて定年退職をする。それをマラソンに喩えるなら、折り返し地点は43.5歳。20代、30代のメンタルヘルス不調が多くの職場に広がっていますが、まだ彼らは、マラソンでいう折り返し地点すら通過していないのです。

好むと好まざるとにかかわらず、私たちはキャリアという名のマラソンを走っていかねばなりません。そのとき―①まずは完走したい。②そしてどうせなら、楽しく走りたい。

①完走は、キャリアでいうサスティナビリティの問題です。いかに持続可能な職業生活を目指していくかということです。

②楽しく走ることは、「QWL」(クオリティ・オブ・ワーキングライフ=労働生活の質)の問題です。仕事はときにつらく、厳しいものですが、それを凌駕する喜びややりがいをどう見出していくか。

こうした問題は個人だけの力ではどうしようもない部分があり、組織全体で、また社会全体で考えるべきものでもあります。経済的尺度のみによる成長への呪縛を解き、成熟した哲学による答えが必要とされる時代がきているのではないでしょうか。

まとめ

キャリアは短距離走ではなく、長距離走です。そこを完走するためには、やがて「自分なり」のキャリアでよいという目線が必要になってきます。「自分なり」というのは、決して全体の流れからの脱落やあきらめ、または我を張ることではありません。

全体とうまく調和しながら、泰然自若とした境地でどしんと構える行き方です。

平均寿命が男女ともに80歳を超える現代の日本。もはや私たちの誰もが、100年を生きてしまう状況になっています。そんなとき、単に生きながらえるだけの人生でよいのかという自問がわいてきます。

さて、人生100年時代。あなたはどんな生産と収穫に取り組むでしょう。

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働き方の哲学

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著 |村山 昇
絵 |若田 紗希 2860円(税込)

ページ数:264ページ
発売日:2018/3/25
ISBN:978-4-7993-2238-3

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仕事の悩みは、なぜ生まれるのでしょうか?
同じ仕事でも、人によって辛さの程度が違うのはなぜでしょうか?
同じ状況で、やる気が出る人と、なくす人に分かれるのはなぜでしょうか?

その答えは「観(=ものの見方・とらえ方)」にあります。
高いスキルがあるのに「観」が弱いために、壁にぶつかる人がたくさんいます。
刺激的な仕事をしているのに「観」が不健全なために、やる気をなくす人もいます。
反対に「健やかな仕事観」は「健やかな仕事意欲」を生み「健やかな仕事人生」につながります。
そうした「健やかな観」をつくるのが、本書の目的です。

「なぜ働くか?」「どう働くか?」
ーー働くあなたがより良い仕事人生をおくるために役立つ視点がきっと見つかります。

目次とキーワード
第1章
─ WORK & CAREER 仕事・キャリアについて
第2章
─ INDEPENDENCE & GROWTH 主体性・成長について
第3章
─ KNOWLEDGE & ABILITY 知識・能力について
第4章
─ MEANING & MOTIVATION 働く意味について
第5章
─ WORKING IN A COMPANY 会社の中で働くことについて
第6章
─ MENTAL HEALTH 心の健康について