『ぜんぶ、すてれば』中野善壽
寺田倉庫元社長
中野善壽のビジネス論
『ぜんぶ、すてれば』著者・中野善壽の発売を記念して、本著の中身から一部を抜粋します。本書は、中野氏の話を聞くことにより浮かび上がった、現代を前向きに、楽しみながら生きるためのヒントを短い言葉と文章にまとめて、紹介しています。
本著一部抜粋
本著で紹介されている言葉のなかから、いくつかを抜粋してご紹介します。
今日がすべて。
颯爽と軽やかに、ぜんぶ捨てれば
僕が何より伝えたいのは、「今日はすべて」という言葉です。
情報が多く、将来のことも、周りの人も気になる時代において、「今に集中する」のはどんどん難しくなっているのかもしれません。
しかし、事実として、夢中になって楽しむことができるのは今しかありません。
今この瞬間、ここにいる自分をもう一度見つめてみる。過去にとらわれず、未来に揺さぶられず、確かに味わうことができる今日に集中して精一杯楽しむ。その結果は、先々にいろんな形となって巡って来るはずです。
人の評価は気にしない。
自分自身が納得できるか
人にどう思われようが、関係ない。僕はそういう性格です。
相手が上司だろうが、先輩だろうが、こんなこと言ったら、悪く思われるんじゃないか」と心配して口をつぐむようなことは、若い頃からほとんどありませんでした。
数年長く生きただけの先輩と僕の考えに、天と地ほどの差はないはずだろうと思っていましたから。
やっぱり自分自身が納得できないことだけは絶対にしたくない。
自分に対して恥ずかしいことは、誰に何を言われようがやりたくない。
そういう気持ちが強いんでしょうね。
準備万端の日は一生来ない。
何も考えず、思い切ればいい
野球は打席が回って来るけれど、仕事や日常生活では打席のタイミングは自分で決めなきゃいけないことのほうが多い。
「まだ早過ぎる。準備ができていないから」なんて言っていたら、いつまで経っても打席に立てない。
「準備万端の日」は一生やって来ないと思ったほうがいい。上には上がいるんだから。
僕はいつも行き当たりばったりで、それなりに失敗もしたけれど、今こうやって楽しく生きている。
何かを気にするよりも大事にすべきなのは、自分に嘘をついていないか。
嘘がなければ、思い切ればいい。
大丈夫。また打席はやって来る。
やりたいことが、なくてもいい。
正直であれば、道は開ける
なんで就職活動に身が入らなかったかというと、やりたいことがなかったからです。
当然と言えば、当然ですよね。
まだ社会に出ていないんだから、どんな仕事があるかもわからない。
僕は自分に嘘をつくのは大嫌いだから、「やりたいことも行きたいところもないなぁ」とだけ考えていました。
でもね、今となっては、正直でよかったと思いますよ。
正直にぼーっとしていたことで、思わぬ道が開けたんですから。
会社はただの箱でしかない。
愛社精神なんて持たなくていい
自分はなんのために働くのか。
答えは一つ。自分のため。
「家族のため」というのも、ちょっとあやしい。
自分が好きで、楽しいから、目の前の仕事をやっている。会社というのは、人間が仕事を楽しくするための手段であり、ただの”箱”でしかない。
会社は自然界に最初からあったものではなく、人間によってつくられたシステムなのだから、人間が会社に使われるようでは、逆転現象もいいところ。
仕事に対してドライであれ、と言っているわけではなくて、「働く主は、あくまで自分である」と握っておくべきだということ。人が中心で、会社が道具。この関係性を間違えないようにしたいですね。
とにかく進め、だけでは危険。
いつでもやめられる勇気を持って
若いうちは「とにかくなんでもやってみなさい」と助言を受けることが多いでしょう。
しかし、進んだら進みっぱなしというのもよくない。
常に周りに吹く風の変化を感じながら、「これ以上進んだら危険だ」と察したら、迷わずブレーキを踏むのが大事。
どうせ何をいつ始めても、成功する確率は百個に一個くらいのものでしょう。だから、止まる力こそが、安全維持のためには大事なのです。
「進みなさい」と「いつでも止まっていい」はセットであると考えてみる。そのほうが、かえって気軽に挑戦しやすくなりませんか。
目標はいらない。
がんばり過ぎたら、やめていい
始める勇気と同じくらい、大事なのは〝やめる勇気〟。
じゃあ、どうやって〝やめどき〟を見極めるかと聞かれたら、「がんばり過ぎている」と気づいた時じゃないかと答えます。
こだわるべきは細部ではなく、大きく自然な流れをつくること。
不自然な力みが生じたり、「どこか自分らしくないな」と感じたとしたら、そろそろやめる時期だと思ったほうがいい。
そんな目標を持たなくたって、人は目の前の幸せや楽しみのために生きていける。それが成熟した国に生きる、摂理ある人のあり方ではないでしょうか。
五年後なんて考えなくていい。
今日を楽しく、 夢中になれることに集中する
伊勢丹に入り数年後、僕は先輩とケンカして会社を辞めることになりました。発端は、いつものように僕が思いついたことをポンポン発言したこと。
せっかく入ったのに、という未練はなし。最初から自分に何ができるとも思っていないし、三年後、五年後にどうしていたいかなんて考えたこともない。
将来についてはあまり具体的に描き過ぎず、ぼんやりとしているくらいがスケールの大きなことができるんじゃないですか。
所有は安定を生まない。
ものを捨てれば、自由になれる
家を買う、家を建てる。住まいを所有することは、いまだに多くの若者の目標になっているようです。
僕はまったくそうしたいと思わない。
なぜ家を買うのか。
「ここにいつでも戻って暮らすことができる」という安心感を得られるからでしょうか。
でも、それは逆に言えば「ここにいつまでも縛られる」ということ。
「いつでも移れる。どこでもすぐに新しい生活を始められる」人生の選択肢を広げてくれる、そんな軽やかさを持ちたいと僕は思います。
自分だったらこうやる。
批判精神が仕事を磨く
振り返ってみると、僕はいつも未経験の分野にばかり縁が結ばれてきました。
しかしながら、「やったことがないから不安だ」と思ったことは一度もありません。
それは若い頃から、先輩や経営層がやることに対して、どこか批判的な目というか、「僕だったらこうやるのにな」と考えるクセがあったからかもしれないですね。
「お前なぁ。いいから言われたとおりにやれよ」と叱られても、全然聞かない。自分流でやってしまって事後報告をしては、怒られていました。
マミーナのOB会に出たら、同僚だった女性たちからさんざん笑われますよ。「中野君は三歳児と同じだった。仕事なのに好きなことばかりに夢中になってた」と言われます。
まとめ
以上、本著の一部を抜粋しお届けしました。
「今を楽しく、自立して生きる」ための言葉と文章を掲載しています。
不確実で変化の激しい時代。
個人の力が試される時代。
人生100年への備えが必要な時代。
日々の膨大な情報に対応し、新しい技術や価値観へのアップデートが求められる。
過去の事例にはもはや頼れない。ロールモデルも、人生プランも、描けない。
自分の意見や考えを持ち、世の中に発信しなければならない。しかし、実績も経験もなく、自信がない。
先の見えない将来のことを考えると、不安で頭がいっぱいになり、疲弊してしまう。
こんな時代で生き残るには、どのような知識をもち、いかなる力を身につけなければならないのか。
本著でぜひ答えを見つけていただきたいと思います。
Recommend
今日がすべて。颯爽と軽やかに、ぜんぶ捨てれば。

ぜんぶ、すてれば
発売日:2020/4/17
ISBN:978-4-7993-2597-1
隈研吾氏推薦!!
「ビジネスとかアートとか、結局のところ「切れ味」だということを、日本で唯一中野さんだけが直感的に理解し実践している!」
“今日がすべて。颯爽と軽やかに、ぜんぶ捨てれば”
“人の評価は気にしない。 自分自身が納得できるか”
“準備万端の日は一生来ない。 何も考えず、思い切ればいい”
“会社はただの箱でしかない。 愛社精神なんて持たなくていい”
“目標はいらない。 がんばり過ぎたら、やめていい”
“所有は安定を生まない。 ものを捨てれば、自由になれる”
“自分だったらこうやる。 批判精神が仕事を磨く”