『鈍感な世界に生きる 敏感な人たち』イルセ・サン
身近な人がHSPの場合の
適切な対策・対処方法とは
5人に1人がHSP
HSPが認識されてこなかった時代背景
世の中のおよそ5人に1人がHSP(Highly Sensitive Person:とても敏感な人)だと言われています
HSPとは、アメリカの精神分析医で学者のエレイン・アーロンによって、1996年に提唱された比較的新しい概念です。
アーロンは、人を男性と女性というように性別で分けるように、とても敏感なタイプとタフなタイプの2つに分けただけであると主張しました。
たしかに今の社会では、外交的でタフな人たちのほうが、「健康的で価値がある」と見なされる傾向があり、エネルギッシュでチャンスをものにしやすいのも事実です。
こうした考えは心理学の世界でも浸透しており、心理学では人間の性格を分析するのに以下の5つの指標が用いられています。
- 神経質傾向
- 外向性
- 開放性
- 誠実性
- 調和性
更に、外向性というのは以下のような言葉で表現されます。
- 温かい人
- 人との交流を求める
- 支配的
- 活動的
- 刺激を求める
- 肯定的な感情
ではいったい内向性というのは、どのように言い表されるのでしょうか?
このようにして人格を言い表す方法を確立したのは、恐らく外交的でタフな人たちでしょう。
これらを見ていると、“豊かな内面世界”や“深く物事を考える力がある”といった長所は見落とされていることに気が付きます。
こういった時代や文化による背景が原因で、HSPの特徴を持つ多くの人が自尊心の低さに苦しんでいるといいます。
HSPの気質を理解する
HSPをより深く理解するために、その特徴についてもみていきましょう。HSPは、そのほかの人と異なる特徴を持って生まれてきたと言われています。
HSPは新生児のときから、刺激に対し強い反応を示すことが多くあります
心理学者のジェローム・ケーガンは、生後4 ヶ月の赤ん坊500人を対象に実験を行った結果、5人に1人の赤ん坊が、ほかの赤ん坊と違う反応を示すことに気が付きました。
同氏は、この2割の子どもを、ほかの子よりも警戒心が強く、慎重であることから”激しく反応する子”と呼びました。更に、その子どもたちが2歳、4歳、7歳、11歳になったときにも再び招集しましたが、乳児期に激しい反応を示していた子どもは、相変わらずほかの子どもたちよりも新しい刺激に強い反応を示しました。
ところが、赤ん坊の頃とは違って「強い反応を示す」からといって、「落ち着きがない」ということはなく他の同世代の子たちよりも人生についてより深く考え、静かで内省的な人間に成長します。
HSPの能力
- 一度に多くの情報を吸収できる
- 音やにおいなどの微細な違いも察知できる
- ゆっくり、深く多角的に考えられる
- とても慎重で、危機管理能力が高い
- 共感力が高き、気配り上手
- 誠実で、責任がある
- 想像力が豊かで、内的生活が充実している
抱えやすい心の問題
- 自分自身に高度な欲求をしてしまう
- 罪悪感と羞恥心に苛まれてしまう
- 恐怖心を感じ、憂鬱になりやすい
- 怒りをうまく放出できない
このような特徴を加味して、HSPの人たちは意識的に以下のような振る舞いをすることがあります。
- 周囲の人に自分がHSPであることを伝える
- 自分の限界点をはっきり伝える
- 休憩や散会の時間を事前に伝える
- 言葉の洪水に溺れないように会話中に休憩をとる
上記はごく一例ですが、受け取る情報の量に溺れたり、深くこだわりすぎないよう、自ら人間関係や物事に距離を保とうとする様子が散見されるかもしれません。
これらをドライで対人関係に問題があると捉えるのではなく、HSPなりの自己コントロールなのだということに理解を示していただけたらと思います。
身近な人がHSPの場合の対応・対策
内向性・感受性が不当に低い評価を与えられるという環境は少なからず存在しています。それぞれの人格が、時代や文化を背景にどのように描写され、評価されるかは、個々人に大きな影響をもたらすでしょう。
そこで、生まれ持った気質であるHSPと向き合い、うまく付き合おうとしている人がもし身近にいた場合には
- HSPという特徴に理解を示す
- 適切な立場、ポジションを与える
- 静かに見守りサポートする
といった対応策が有効であると考えられます。
自分自身への内省、深い思慮、その場の空気や人の表情から即座に状況を察知できる特徴は、あらゆる組織やコミュニティにおいて必要な能力であるといえます。
「良好な環境下であれば、高い能力を発揮できる」の章でも解説したとおり、HSPはストレスのかかる環境では免疫力が落ちたり注意力が散漫になる傾向がありますが、適切な環境下ではむしろ高いパフォーマンスを発揮する可能性があり、職場や家庭内においても重要な役割を担ってくれることでしょう。
今回は身近な人がHSPの場合の適切な対策・対処方法について、『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』から一部を抜粋・要約してご紹介しました。 本書では、Highly Sensitive Person(HSP)と呼ばれる「とても敏感な人たち」について、さまざまな特徴やその敏感さを武器に強く生き抜くヒントが満載です。
自分が、あるいは周りの人が「とても敏感な人かもしれない」と感じたとき、愛すべき能力として敏感さを受け止め、可能性を後押しする一助としてこの本をお役立ていただければ幸いです。
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