がん治療の現在 〜光免疫療法の衝撃〜

がん治療の現在 〜光免疫療法の衝撃〜

著 | 永山悦子
1320円 (税込) ※1

ページ数:288ページ
発売日:2020/12/18
ISBN:978-4-7993-2695-4

Product description 商品説明

これまでのがん治療とは異なる仕組みでがん細胞を攻撃する「光免疫療法」が、世界ではじめて日本で承認された。
光免疫療法では、まず狙ったがん細胞の表面に、魔法の銃弾ともよばれる抗体を結びつける。
この抗体には、光感受性物質が取りつけられていて、光をあてると急激な化学反応を起こす。
急激な変化によって細胞膜にはたくさんの穴が空き、
そこから水が流れ込んで、がん細胞は破裂して死ぬ。
破壊されたがん細胞は、自らの目印となる物質をばら撒く。
ばら撒かれた目印は体内の免疫を活性化させ、まだ残っているがん細胞を標的として叩く。

がん細胞だけを「光」で破壊し「免疫」で逃さない−−−がん治療の新たな選択肢となりうる画期的な治療法だ。

米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員によって開発されたこの療法は、
有無をいわせずがんの細胞膜を破壊することから、
楽天の三木谷浩史氏が「インターネットが世の中を変えると確信したときと同じ感覚」「これはいける」と確信して資金を提供し、
異例のスピードで早期承認につながった。

本書では、驚くべき効果が期待できる光免疫療法を紹介するとともに、
がん治療の最前線といえるさまざまな療法−−−なかでもとくに注目度が高い、
がん医療の歴史を変えたといわれる「免疫チェックポイント阻害薬」、 人工的にパワーアップされた攻撃力をもつ「CAR-T細胞療法」、
ソフトクリームが溶けていくようにがん細胞を壊す「腫瘍溶解性ウイルス療法」、
患者一人ひとりにあわせた「ゲノム医療」
などについて解説する。

Index 目次

第1章 がんと免疫の戦略と駆け引き
がんは免疫から逃避する
長生きはよろこばしいことなのだが
免疫細胞たちは相手の弱点をみきわめ、戦術を展開する
免疫本来の力を回復させ、がん細胞への攻撃力を高める「免疫療法」
免疫療法の歴史と信用度
免疫にアクセルを踏ませるのではなく、ブレーキを外させる
免疫療法は「受けない」決断もときには必要
乳がんを発症するまえに切除を決断

第2章 がん光免疫療法〜その驚異的な仕組み〜
狙ったがん細胞をピンポイントで物理的に破壊する
有無をいわせず細胞膜に穴をこじ開ける破壊力
「光」で破壊し、「免疫」で逃さない
がんを攻撃する免疫を誘導する治療法
免疫細胞は生かしたまま、がん細胞だけを攻撃
「あっというまにがん細胞を殺す力がある。まるで誘導ミサイルだ」
1週間後には患部が縮まり、1カ月後にはほとんどみえなくなった
画期性や有効性でスピード承認が適用される
「インターネットが世の中を変える」と確信したときと同じ感覚
開発された薬は「RM 1929」と名づけられた
免疫療法よりもさらに新しい「第5の治療」となるか

第3章 がん光免疫療法〜効果と安全性、実用化への道筋〜
光免疫療法の臨床試験が続いている
イルミノックス™プラットフォームから新たな治療法を
光免疫療法と似て非なる治療法
「失敗」と思われた実験が、光免疫療法の開発につながった
からみあったがん免疫の糸を解きほぐしたい
関西医科大に「光免疫医学研究所」を設置
薬価は高額となるが、原価の透明性を高めた
「医学研究者は、研究成果が患者さんのところに届くことを夢にみる」

第4章 がん光免疫療法〜よせられる期待〜
《インタビュー》田原信(国立がん研究センター東病院 頭頸部内科長)
《インタビュー》ミゲル・ガルシア・グズマン(楽天メディカル 副会長兼チーム・サイエンティフィックオフィサー)

第5章 がん医療の歴史を変えた免疫チェックポイント阻害薬
がん治療の「第4」の選択肢となる
先まわりしてブレーキを踏ませない
成果はあがったが製薬会社が尻込みする
現場の医師から驚きの声があがる
免疫チェックポイント阻害薬が効かないケース
多様な併用療法によって治療効果を高める
医療機関でもわからないことが多くある
高額な薬剤費と「高額療養費制度」
《インタビュー》河上裕(日本がん免疫学会理事長)

第6章 人工的につくったCAR ―T細胞の高い攻撃力
人工的にパワーアップされたT細胞
免疫チェックポイント阻害薬では効果があがらない
抗原認識部位と共刺激分子を組みあわせた人工細胞
「がんから解放されて8年!」と書かれたメッセージボード
もしこの治療をしなければ全員が死ぬことになる、という覚悟
サイトカイン放出症候群という副作用
1万個の抗体から決定的な1個をみつける
固形がんへの応用研究が進む
青虫の酵素でCAR T細胞を安くはやくつくる
i PS細胞を使い、即戦力となる若いT細胞を大量培養

第7章 がん細胞で爆発的に増える腫瘍溶解性ウイルス
ソフトクリームが溶けていくようにがん細胞を壊す
遺伝子の「運び屋」ウイルスで再び脚光
正常細胞を残して、がん細胞だけを叩く
三つの遺伝子を抑えた「第3世代」ウイルス
「冷たい腫瘍」を「熱い腫瘍」に変える
免疫細胞に「みんな集まれ!」とよびかける
ウイルスが1日に10万〜100万倍に増えてがん細胞を破壊
長期的にどのような影響を与えるか継続的にチェック

第8章 患者一人ひとりにあわせたがんゲノム医療
一人ひとりがベストの治療法を選ぶために
たくさんの遺伝子を一度に調べて、がんの特徴に一気に迫る
治療法がみつかるのは10人にひとり程度
遺伝子パネル検査は「最後の手段」か
「未承認薬などをいちはやく使いたい」思いに応える受け皿試験
日本は自前の検査体制を構築し、データベースをつくるべき
「まだ治療薬が承認されていない遺伝子を調べてどうするのか」
すべての遺伝情報を網羅的に調べる「全ゲノム解析」
生まれつきがんになりやすいか、わかる可能性も
「究極の個別化医療」の実現を目指して
《インタビュー》間野博行(国立がん研究センター研究所長)

9章 正しい情報をみきわめて、正しい治療を
新しい治療法が次々開発され、情報は複雑化
もっとセカンドオピニオンを使ってほしい
「正しく、納得できる」判断ができるようにサポート
がんにかんするさまざまな情報の信頼度
「情報は、命を左右しかねません」
集まる「場所」があれば、困っているのは自分だけではないと気づける
「ひとりじゃないよ、と伝えたい」

Author description 著者情報

永山悦子

東京都出身。1991年毎日新聞社入社。和歌山支局、前橋支局などを経て、2002~16年東京本社科学環境部。ライフサイエンス、環境、宇宙開発、科学技術政策などを担当。小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還を現地で取材した。13~15年に厚生労働省がん対策推進協議会委員を務め、がん対策推進基本計画の中間評価などに携わった。現在は、オピニオングループ編集委員。著書に『がん光免疫療法の登場 手術や抗がん剤、放射線ではない画期的治療』(青灯社)など。
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