発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体

発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体

著 | みきいちたろう
1320円 (税込) ※1

発売日:2023/2/17
ISBN:978-4-7993-2934-4

Product description 商品説明

「発達性トラウマ(Developmental Trauma)」とは、複雑性PTSDの原因となる子ども時代に負ったトラウマのことです。家庭や学校などで負った慢性的な(反復性)ストレスがトラウマを生み、複雑性PTSDの原因となることがとても多いのです。そのため、発達性トラウマは、私たちが抱える生きづらさの原因を明らかにするものとして近年注目されています。
「発達性トラウマ」あるいは「トラウマ」という概念から生きづらさを眺めてみると、多くのことが了解でき、適切なケアにつながっていくことがわかります。これまではトラウマというと、戦争や災害、レイプといったある限定された状況による症状(PTSD)というイメージでしたが、そうしたものとトラウマの全貌は異なります。
本書では、近年の知見や現場での経験、体験をもとに、読者が感じているかもしれない生きづらさを、トラウマ(発達性トラウマ)という視点から照らしてみたいと思います。

トラウマの原因として、従来は劇的な出来事に焦点が当たり、より身近な日常的にあるトラウマに苦しむ人たちには適切な知識やケアが届いていませんでした。
身近なトラウマも、それぞれに抱える生きづらさは深刻です。そうした問題意識から、本書ではよくある身近なお困りごと、生きづらさを中心に取り上げています。身近なトラウマがわかると、劇的な出来事も含むトラウマ全体についても見通しが付きやすくなります。
本書は、「発達性トラウマ」というタイトルですが、もちろん成人してから受けるストレスも含めたトラウマ全体のものとしてもお読みいただけます。
トラウマとはストレス障害と捉えられます。決して特別な事象ではありません。誰しも人生の中でストレスが重なってバランスを崩すことは生じます。
また、もう一つの特徴であるハラスメントについてもその仕組みが広く知られる必要があります。そこには人間が持つ他人を巻き込んで実存を維持しようとする営みやコミュニケーションの構造が隠れています。自己の不全感をかりそめに満たすために他者を支配しようとする働きを人は誰しも持っています。ハラスメントの仕組みがわかると、互いの違いや多様性を尊重して関わり合うための大切な視点を得ることができます。
さらに、生きづらさの多くが本来は社会からもたらされるものです。そんな生きづらさが過度に個人化されがちな現代にあって、それを被る側の内的なメカニズムが明らかになることで、生きづらさを切り分けてもう一度社会に押し返す力にもなり得ます。

Index 目次

第1章 この「生きづらさ」はどこから来るのか?
 原因のわからない生きづらさ
 トラウマについて書かれた本を読んでもピンとこない、自分ごととは思えない
 トラウマなんて存在しない?
 トラウマの歴史は注目と忘却の繰り返し

自己理解のためのトラウマチェックリスト

第2章 トラウマをめぐる経糸と緯糸
     ――“第四の発達障害”を生む発達性トラウマ
 私は発達障害かも?
 身近になった発達障害
 発達障害の“急増”と違和感
 「第四の発達障害」
 トラウマと発達障害の症状が酷似する理由
 トラウマへの理解を支える経糸と緯糸
 トラウマ研究の始まり
 ヒステリーへの取り組み〜ジャネ、フロイトの登場
 長い無関心と、浅い歴史
 「複雑性PTSD」の提起
 ハーマンの提起に対する激しい批判
 愛着(Attachment)研究の始まり
 「愛着」とは何か?
 児童虐待の発見
 逆境的小児期体験(ACE : Adverse Childhood Experiences)研究
 脳科学が明らかにした虐待の痕跡
 ポリヴェーガル理論(Polycagal Theory)
 PTSDとは何か?〜戦争、惨事、レイプなどの主として単回性のトラウマ
 複雑性PTSD、発達性トラウマとは何か?〜長期に反復される慢性的なトラウマ
 その他のストレス関連障害との関係について
 私たちは誰もがトラウマを抱えている

第3章 トラウマがもたらす“自己の喪失”と様々な症状
 トラウマの本質は「自己の喪失」
 ログインしていないスマートフォン
 症状1 過緊張
 症状2 過剰適応
 症状3 安心・安全感、基本的信頼感の欠如
 症状4 見捨てられる不安
 症状5 対人恐怖、社会恐怖
 症状6 他人と自然に付き合えない、一体感が得られない
 症状7 脳や身体の興奮、過覚醒
 症状8 能力、パフォーマンスの低下
 症状9 フラッシュバック(恥の感覚、自責感など)
 症状10ねじれた複雑な世界観
 症状11 自他の区別が曖昧になる
 症状12 理想主義的になる
 症状13 暗黙のルールがわからない、他者の言葉に振り回される
 症状14 自信のなさ、スティグマ感
 症状15 自己開示できない、自分の人生が始まらない
 症状16 過剰な客観性、自分の価値観で判断できない
 症状17 時間の主権を奪われる〜ニセ成熟、更新されない時間、焦燥感
 症状18 記憶がなくなる、思い出せなくなる
 症状19 自分の感情がわからない、うまく表現できない
 症状20 離人感、現実感のなさ
 症状21 感覚過敏、感覚鈍麻
 症状22 葛藤やフラッシュバックによるパニック症状
 症状23 “無限”の世界観
 そのほか、トラウマの影響によって生じる様々な症状
 別の病気と診断されたものがトラウマによるものであるというケースも
 トラウマの存在を前提とした診断とケアへ
 
第4章 トラウマを理解する
     ――ストレス障害、ハラスメントとしてのトラウマ
 トラウマを「心の傷」として捉えない
 トラウマとはストレス障害である
 ストレス障害として捉える利点
 ストレスとは何か?
 何がストレスになるのか?
 なぜシマウマは胃潰瘍にならないか?
 生物は想定外のストレスに弱い
 ストレスに対する意外な強靭さと脆弱性
 ストレスに対する脆弱性の変数
 脆弱性の変数から見たトラウマ
 日常生活における持続的なストレスはトラウマの原因となり得る
 成長過程でのストレス〜愛着障害、発達性トラウマ
 こんな場合もトラウマを疑ってみる
 トラウマのもう一つの特徴〜ハラスメント、心理的支配の影響は甚大
 端緒となった「ダブル・バインド」の発見
 ハラスメントは社会性や、よりよく生きようとする意思を悪用して入り込む
 トラウマによって心身はどのように変わるのか
 脳の変化
 神経系の変化
 内分泌系、免疫系の変化
 認知、感情などの変化
 自己(主体、セルフ)の変化
 関係の変化

第5章 トラウマを克服する
 トラウマ克服の全体像
 ①環境を調整する
   コラム トラウマをケアする主な心理療法
 ②身体(自律神経など)を回復する
   コラム トラウマに対する薬物療法
 ③自己(主体、セルフ)を再建する
   コラム ハラスメントの構造を知る
 ④記憶・経験を処理する
   コラム 記憶を処理するアプローチ
 ⑤他者(社会)とのつながりを回復する

Author description 著者情報

みきいちたろう

公認心理師。大阪生まれ、大阪大学文学部卒、大阪大学大学院文学研究科修士課程修了。在学時よりカウンセリングに携わる。大学院修了後、大手電機メーカー、応用社会心理学研究所、大阪心理教育センターを経て、ブリーフセラピーカウンセリング・センター(B.C.C.)を設立。トラウマ、愛着障害、吃音などのケアを専門にカウンセリングを提供している。
著書に『プロカウンセラーが教える 他人の言葉をスルーする技術』(フォレスト出版)がある。
雑誌、テレビなどメディア掲載・出演も多く、テレビドラマの制作協力(医療監修)も行なっている。
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