中国も日本のようになってしまうのか?

中国も日本のようになってしまうのか?

著 | 王国培
1760円 (税込) ※1

ページ数:336ページ
発売日:2013/7/20
ISBN:978-4-7993-1359-6

Product description 商品説明

現在の中国経済の状況は、日本の高度成長時代とバブル経済時代にさまざまな点で似ている。中国の気鋭のジャーナリストが日本の学・政・財界の有識者に日中の比較と中国経済の今後について問う。中国バブルの崩壊は日本にも大きな影響を及ぼすのは確実だ。その時期は? 果たしてソフトランディングは可能なのか? 

日本の経済専門家10人が日本の過去を振り返り中国の未来を論じる。(安斎隆/竹中平蔵/小林英夫/瀬口清之/高橋亘/関山健/榊原英資/野口悠紀雄/谷口誠/村上誠一郎)


(「はじめに」より)
本書で、私は10人の日本の経済専門家を厳選し、彼らに日中のバブル経済の類似点、相違点を詳しく述べていただいた。厳選した、と書いたのは、「バブル経済」が関わる範囲は大変広く、国家経済が関わるほぼすべての領域にまたがり、問題によっては経済の域を超え政治にも関係するためである。

本全体の視点を立体的かつ多面的にするために、また、視点上の重複を避けるため、私はそれぞれ独自の背景と専門知識を持つ10人を訪ねたが、避けられない核心的問題に関しては、すべてその問題を解説すべき人物を訪ねることができたと思う。

たとえば日本における「経済改革の総合デザイナー」の誉れ高い元経済財政政策大臣の竹中平蔵氏は経済の構造改革および不良債権処理における経験が豊富であるし、「ミスター円」こと榊原英資氏は金利と為替レートの問題に実践的な経験と深い見解を有しておられる。

また、元日本銀行金融研究所長の高橋亘氏はバブル経済の渦の中における中央銀行のあり方や反省に関する理解を助けてくれた。バブル経済期に日本の駐国連特命全権大使であった谷口誠氏は、当時の日米関係に対する現場からの見解と、それに基づく深い洞察を示してくださった。

財務副大臣を務めた経験を持つ村上誠一郎衆議院議員は政治家ならではの視点を持っていたし、野口悠紀雄氏は日本で最も名高いバブル経済および土地経済学の研究者である。日本アイワイバンク銀行(現セブン銀行)の安斎隆会長はバブル経済期の商業銀行の内部運営をしっかりご存じだし、早稲田大学教授で経済史学者の小林英夫氏は深い歴史的かつ人文的知見を備えておられた。
アメリカのランド研究所の研究員だった瀬口清之氏は長らく日米中の三カ国をまたにかけ活躍した、日米中比較に長けた人物である。また10人のうち最も若い関山健氏は、歴史にとらわれない大胆な視点を持ち、説得力のある説を伺うことができた。

しかし、中国経済が日本経済と同じ轍を踏み、当時の日本のようなバブル崩壊を経験するかどうかについて、本書で結論を出すことはできなかった。結論を出す以前に、それぞれの意見は激しく対立していた。取材対象のうちの多くの方々は意見が相互にまったく対立しており、インタビュー中にほかの取材対象を批判することさえあった。この10人の中には、中国経済が日本のようなバブル崩壊を避けられないと考えている人もおり、中国政府の今後の措置によってどうなるかが変わると考えている人もいた。また、中国経済に日本式バブル崩壊はほぼ起こり得ないと考えている人もいた。

それゆえ、既存の日中バブル経済の比較本と比べた場合、本書は「1冊の本」とは言えないかもしれない。私の従来の考え方では、1冊の本とは1人の人の思想が集められたものであり、述べられている結論は1つで、完成したひとまとまりの思想体系を持ち、豊富な例証や引用を用い、論理的な推論を重ね、じっくりと結論を出し、読者を啓発するものである。

それに比べると、本書はむしろ意見集であり、思想集であり、矛盾であり、衝突の地である。本書が伝えるのは1人の人間の論理や思想ではなく10人の賢者の知恵と考察が一堂に会したものである。読者は本書を読む過程において、考えつつ、思想を戦わせ、飛び散る火花から自らの脳細胞と既存の知識に刺激を受けてほしい。そして脳細胞と知識を結び合わせて自らのロジックを打ち立て、自分の知識体系を構築し、最後に自ら判断を下し、自らの判断に責任を持ってほしい。

今回、インタビューを受けてくれた日本の経済専門家たちは中国に対し最大限の好意を示し、中国経済は日本のような悲劇から免れることを希望してくれた。もちろん、それは日本の利益から考えたことだが、もし、中国経済が失敗した場合、疑いなくもともと弱体化している日本経済は打撃を受ける。インタビュー時、取材対象の方々は本書に対して期待してくれており、中国の政策決定層におそらくいくらかのヒントを与えられることを望んでいるようだった。もし、本書がそのような役割を担えたら、私にとっても光栄の至りである。

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