TROUBLE MAKERS トラブルメーカーズ 「異端児」たちはいかにしてシリコンバレーを創ったのか?

TROUBLE MAKERS トラブルメーカーズ 「異端児」たちはいかにしてシリコンバレーを創ったのか?

著 | レスリー・バーリン
訳 | 牧野洋
3300円 (税込) ※1

発売日:2021/4/23
ISBN:978-4-7993-2728-9

Product description 商品説明

本書を一言で表現するとすれば、「プロジェクトXのシリコンバレー版」である。「プロジェクトX」は情熱を抱いて夢を実現した無名の日本人を描いて、大ヒットした。
 本書の主人公も情熱あふれる無名のアメリカ人であり、シリコンバレーの事実上の生みの親だ。「シリコンバレーの見えざるヒーロー」と言い換えてもいい。
 これまで語られてきたシリコンバレー物語は表層的であり、本質を突いているとは言い難い。基本的にヒーロー物語に終始していたからだ。古い世代の代表的ヒーローがジョブズならば、新しい世代のヒーローは誰だろうか? テスラのイーロン・マスクを挙げる人もいれば、グーグルのラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンを挙げる人もいるだろう。
ジーンズをはいた若手起業家がエンジニア的才覚を発揮し、既存秩序を破壊して一大イノベーションを起こす――これがヒーローの典型的イメージだ。痛快なサクセスストーリーであり、確かに分かりやすい。
だが、ヒーロー物語はシリコンバレーの一面でしかない。シリコンバレーが世界の情報技術(IT)ハブになれたのは、「見えざるヒーロー」の活躍によって起業エコシステムが出来上がっていたからだ。
現在、日本を含めて世界各国が「シリコンバレーに追い付け・追い越せ」を合言葉にして、産学の連携をテコにイノベーションを起こそうとしている。アントレプレナーシップ(起業家精神)こそ競争力の決め手になると考えているのだ。
レースに喩えれば、シリコンバレーの背中は見えてきているのだろうか? 答えはノーだ。
シリコンバレーが誕生してからおよそ半世紀たっている。なぜシリコンバレーに追い付き、追い越す勢力がなかなか出てこないのか。ひょっとしたらヒーロー物語をまねしようとして失敗しているのではないか。
当のシリコンバレーはスタンフォード大を中心に形成された起業エコシステムによって、天才起業家の誕生を待たなくても、イノベーションを起こせるようになった。運に左右される「ヒーローモデル」から脱却したと言ってもいい。
 起業エコシステムを支えているのが「見えざるヒーロー」である。ベンチャーキャピタリスト、エンジェル投資家、ベテランビジネスマン、科学者、弁護士、PR専門家――。イノベーションの担い手は、ヒーロー物語に出てくるはだしの若手起業家とは限らない。
 本書の中に登場する「見えざるヒーロー」は7人だ。アップルの初代会長マイク・マークラ、インターネットやパソコンの礎を築いたボブ・テイラー、世界初のバイオテクノロジー企業を立ち上げたボブ・スワンソン等々。ソフトウエア業界の先駆者が女性起業家だという事実にも驚かされる。
著者のレスリー・バーリン氏は7人についてそれぞれの人生も含めてカラフルに描いている。①さまざまな関係者から未公開の私的資料やメモを入手、②文書保管所で大量の資料やインタビュー記録を精査、③6年かけて70人以上の当事者に個別インタビュー――である。
本書は誰もが知っているヒーローを主人公にしているわけでなない。それでもわくわくするような物語でいっぱいなのである。

Index 目次

序章 ちょっと愛のようなもの

第1部 出現 1969~71
第1章 ペンタゴンのプロメテウス――ボブ・テイラー
第2章 ナードのパラダイス――アル・アルコーン
第3章 ポケットに8枚の25セント硬貨――フォーン・アルバレズ
第4章 フェアチルドレン――マイク・マークラ
第5章 これをどうしたらいい?--ニルス・ライマース
第6章 一緒に来て、でないなら自分一人で行く――サンドラ・カーツィッグ

第2部 建設 1972~75
第7章 この女性を見掛けましたか?――サンドラ・カーツィッグ
第8章 コンピューターの従来型概念にとらわれるな!――ボブ・テイラー
第9章 稲妻に打たれる――アル・アルコーン
第10章 なせば成る――ニルス・ライマース
第11章 私が月曜日にやること――マイク・マークラ

第3部 挑戦 1976~77
第12章 机に座って仕事をする必要があった――フォーン・アルバレズ
第13章 これはとんでもなくすごいディールだ――アル・アルコーン
第14章 もう1年頑張ろう、さもなければつぶれる――サンドラ・カーツィッグ
第15章 起業なんて考えたこともなかった――ニルス・ライマースとボブ・スワンソン
第16章 これでスイッチが入った――マイク・マークラ
第17章 あれほど早くタイプする男は見たことがない――ボブ・テイラー
第18章 どこにも業界基準がない――マイク・マークラ

第4部 勝利 1979~81
第19章 1億ドルに見えるよ!――ニルス・ライマースとボブ・スワンソン
第20章 車のチャイルドシートに座らされている――アル・アルコーン
第21章 マシンを使いこなす祖母の姿を想像できる?――ボブ・テイラー
第22章 若いマニアたち――マイク・マークラ
第23章 一体何を言おうとしているの?――フォーン・アルバレズ
第24章 おカネは要らない――サンドラ・カーツィッグ

第5部 移行期 1983~84
第25章 ウサギが逃げ出した――ボブ・テイラー
第26章 ビデオ王国――アル・アルコーン
第27章 誰よりも早く気付いていた――ニルス・ライマース
第28章 売るとは誰も思っていなかった――フォーン・アルバレズ
第29章 世界は二度と元に戻らない――マイク・マークラ
第30章 カネのために一生懸命働く――サンドラ・カーツィッグ
おわりに――次から次と

追記 その後のトラブルメーカーたち

Author description 著者情報

レスリー・バーリン

シリコンバレーの郷土史家。スタンフォード大学「シリコンバレー文書保管所」のプロジェクトヒストリアン、ニューヨーク・タイムズ紙の「プロタイプ」コラムニスト、スタンフォード大学「行動科学高等研究センター(CASBS)」のフェロー。スミソニアン協会が運営する国立アメリカ歴史博物館(NMAH)「レメルソン発明・イノベーション研究センター(LCSII)」の諮問委員会メンバーも務める。スタンフォード大学で博士号(歴史学)、イェール大学で学士号(アメリカ研究)を取得。夫と一緒にシリコンバレーに住み、大学生の子どもが2人いる。バーリン夫妻は共に12歳のころからの幼なじみ。
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牧野洋

ジャーナリスト兼翻訳家。慶應義塾大学経済学部卒、米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクール修士。日本経済新聞社でニューヨーク特派員や編集委員を歴任し2007年に独立。早稲田大学大学院ジャーナリズムスクール非常勤講師。著書に『福岡はすごい』(イースト新書)、『官報複合体』(講談社)、訳書に『マインドハッキング』(クリストファー・ワイリー著、新潮社)、『NETFLIX』(ジーナ・キーティング著、同)、『STARTUP(スタートアップ)』(ダイアナ・キャンダー、同)など。
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